訪日観光客の鈍化傾向をどう捉える?

ここ数年、中国人の「爆買い」に代表される訪日外国人の増加は顕著な数字として表れました。円安が続いたことが一番の要因と考えられますが、外国人にとって日本に気軽に来れるような法整備や環境も大きいところでしょう。

間違いなく日本の観光業を支えているもの、そしてこれからも支えてくれるのが訪日外国人(インバウンド)です。まずは最近数年の訪日観光客の「旅行者数」と「旅行消費額」をみてみましょう。

【訪日外国人客数】
●2011年 622万人
●2012年 836万人
●2013年 1036万人
●2014年 1341万人
●2015年 1974万人
※出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」

【旅行消費額】
●2011年 8,135億円
●2012年 10,846億円
●2013年 14,167億円
●2014年 20,278億円
●2015年 34,771億円
※出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」

このように2011年から5年あまりで「旅行者数」は3倍強、「旅行消費額」は4倍強に増えていることがわかります。この成長度は著しく、日本の成長という意味でも、とても重要な産業になっていることがわかるとおもいます。

さらに政府は、2016年3月に発表した観光ビジョンで、東京オリンピックが開催される2020年に訪日外国人客数の目標値を4000万人に設定しました。

日本へ訪れる外国人の内訳は?

2010年代は過去の日本の歴史に見たことがない「訪日外国人数」になることでしょう。では実際に訪れている人の国や地域はどうでしょうか?

●中国 25.3%
●韓国 20.3%
●台湾 18.6%
●香港 7.7%
●タイ 4.0%
●北米 6.4%
●欧州主要5国 4.1%
●その他 13.7%

このように訪日外国人の実に8割以上がアジアからであることがわかります。その中でも中国人が圧倒的に多いのが現状です。日本がいかにアジアから支えられているかがわかると思います。

ちなみにリピーター率は58.7%、1人当たりの旅行支出は17.6万円になっています。

1人当たりの消費単価は減少傾向

そんな中で1人当たりの消費単価は、最近の円高が影響あってか減少傾向にあると言われています。つまり「爆買い」にブレーキがかかっている状況です。しかし一方で「ストーリー買い」という言葉が目立ち始めました。

「ストーリー買い」が意味するところは、ただ日本の商品を買うだけではなく、生産者のところまで行って、体験まで含めた価値に対して対価を支払うということです。

実際に生産者の思考や考え方、技巧・匠を目の当たりにできるツアーが人気になっています。一度日本を訪れた外国人が、リピーターとして訪れた時に、もっと深いものを体験しにくる傾向があるのかもしれません。

東京から地方へ、さらには定番の観光地からディープな日本文化や生活を体験したい、という外国人が増えてきています。

これからの訪日外国人マーケティングに必要な事

近年日本へ訪れる外国人は、「日本で家電製品を買いたい」「ドン・キホーテに行きたい」「銀座で買い物がしたい」、などといった物欲というより、日本らしい体験を強く求めています。

島国で閉鎖的であった日本文化は、明らかに世界の文化とは異質を放つ部分があり、外国人はその日本独特な精神や考え方を学び、体験したいと思っています。

そこの部分をしっかり理解して、今後の外国人向けのマーケティング、サービスを考えていくと良いでしょう。ただ商品を並べるだけでなく、その商品ができるまでの工程、生産者の考え方などを指南するようなサービスが好まれると思います。

まとめ

東京オリンピックが開催される2020年が訪日外国人数のピークだとすれば、現在(2016年10月時点)から更に2倍の外国人が日本へ訪れることになります。単純に考えると観光産業も2倍規模になり、ビジネスチャンスも多くなります。

これからは日本の本質を伝えていくようなサービスを考え提供することで、私たちにとってもそれが日本文化を守っていくことに繋がると思います。

アジアだけでなく世界中から注目されて、全世界からの旅行者が増える未来を願いたいところです。