電通の高橋まつりさん過労死

2016年9月下旬、非常に残念なニュースが日本を駆け巡りました。電通の新入社員として活躍していた高橋まつりさん(享年24)の労災認定が下されたというものです。高橋まつりさんは2015年12月25日に飛び降り自殺をしていたのです。

なぜ飛び降り自殺をしたかというと、電通での過酷な業務に睡眠時間を奪われ、1日24時間のうち殆ど仕事をしている状態、そして上司からのパワハラも限度を超えるものであったと言われています。

なぜこのような悲しい事が起こってしまったのでしょうか?

高橋まつりさんの経歴

高橋まつりさんは2015年4月に電通の新入社員として入社しました。電通といえば日本最大手の広告代理店であり、業界の中でも体育会系であることが有名です。電通の新入社員は毎年入社すると全員で富士山を登山する、という話もあります。

●本名   :高橋まつりさん
●生年月日 :1991年 ※2015年当時24歳
●学歴   :2015年3月 東京大文学部卒業
●社歴   :2015年4月 電通入社

電通では2015年10月からインターネット広告部門に配属されました。そこで証券会社の広告業務を主に担当したと言われています。

インターネット広告は今やテレビCMに次ぐ第2番目のメディアに急成長した分野なので、会社の彼女に対する期待も大きかったのかもしれません。




高橋まつりさんのツイッター

2015年10月にインターネット広告に配属されて、12月25日に自殺を図るまでの約3ヶ月の間、高橋まつりさんは過酷な労働に関するコメントをSNS(ツイッター)上で発信していました。

ここでは、そのつぶやきの一例を掲載します。

「土日も出勤しなければならないことがまた決定し、本気で死んでしまいたい。」2015年11月5日
「死にたいと思いながらこんなにストレスフルな毎日を乗り越えた先に何が残るんだろうか。」2015年12月16日
「1日20時間とか会社にいるともはや何のために生きてるのか分からなくなって笑けてくるな。」2015年12月17日

このようなつぶやきが3ヶ月にわたっていくつも発信されていました。平日は明け方まで残業し、そして朝早く出社する日々が続いていたと思われます。また週末も会社に出てきて広告業務や資料作成を行っていました。

時には「眠る以外のすべての感情を失ってしまった」というようなコメントもあったので、想像を絶する業務内容と精神状態だったことがわかります。

電通の体質とネット広告業務

問題視されるのが、まず電通という会社体質だと思います。広告代理店というのはテレビ局や新聞社、出版社などのメディア(媒体社)とクライアント(広告主)の間に立って、業務を進めていきます。

例えば「テレビCMを新しいものにして早急に差し替えたい。」というクライアント(広告主)からの依頼があれば、電通の営業はクリエイティブスタッフ、制作会社などと協働でCMを作り上げる一方、メディア(媒体社)との広告枠の調整などを計ります。

クライアントからの無理難題を解決すればするほど、広告会社としての評価が上がるといった側面もあるのは事実です。無理難題が増えれば増えるほど、電通社員の労働時間も長くなることは言うまでもありません。

またインターネット広告というのは、他のメディアと違って、例えばバナーのクリエイティブやコピーなどを様々なサイトで掲載して、広告効率が最適化になるように「運用」していくことが最大の特徴です。

ですので、莫大な広告量と掲載結果から効率を見出していくという、大変な作業があるわけです。また日進月歩のネット広告は、誰もが新しい手法や運用方法を探している毎日でもあります。

まとめ

広告代理店はかつて広告を創り、メディアと調整・交渉を行って広告を掲載する、といった側面が強かったのですが、近年では広告分野以外のソリューションも担うようになっており、広告会社も生き残るためにはそこを強化してきています。

しかし一方、クライアント(広告主)からはある意味「どうでもいい依頼や難題」が投げかけられてくるケースも多く、それに振り回されるが故、心身ともに疲弊してしまう社員もいることは事実です。

またネット広告という新しい分野において、クリエイティブな作業よりもデータ重視の業務内容が自分には合わない、といった若い社員も少なからずいると思いますし、会社側も配属する人間のパーソナリティやキャラクターを尊重することが大事だと感じます。